ドクターズコラム

Doctor's Column

がんに近づく免疫・遠ざかる免疫

2020.10.20
がん医療治療免疫

・がん憎悪の主因は免疫が遠ざかること
・近づいても眠る免疫はダメ
・先ずは免疫解析でプレシジョン計画

そもそも、がんもウイルスも自分自身の免疫力で封じることができます。過度のアルコールや疲労などで免疫力が低下するとウイルスは体の中で増えてどんどん広がります。がんも同様です。がんに元気いっぱいの免疫が近づけばスーッと退治してくれます。

しかし、がんと免疫の関係で重要な問題点が二つあります。第一の問題点は、がんの周りの固い壁に免疫が跳ね返されてしまうことです。特に進行がんではこの壁は大きくて堅固です。免疫は初期のがんには効くが、進行がんでは効きづらいと言われる理由です。この壁を腫瘍間質と言います。これを破壊すれば、進行したがんでも一気に攻め込むことができるのです。それには腫瘍間質を破壊する薬を使えば良いわけで、世界中の製薬メーカーが開発に凌ぎを削っています。あるいは、現在すでにある抗がん剤を温熱療法などと組み合わせて腫瘍間質を壊す工夫も一方です。

第二の問題点は、腫瘍間質を突破しても免疫が眠ってしまうことです。これは免疫チェックポイントという免疫のブレーキです。がんの傍までくると免疫にブレーキがかかってしまうことがあります。代表的なブレーキとしてPD-1CTLA-4があります。このブレーキを解除する薬が免疫チェックポイント阻害剤です。この薬を使うことにより、免疫は活動し始めます。しかし、時に過剰な免疫となり自分自身を攻撃することもありますので、しっかりした管理体制が必要です。

がんと免疫の関係は半世紀の間、研究されてきました。今や腫瘍間質免疫チェックポイントの二つの問題点と解決法が明示されています。がんに対する免疫治療の最大限の効果と最小限の副作用を考える上では、免疫解析(分子・遺伝子解析を含む)が最初に行うべき重要な位置づけとなります。その結果をふまえてプレシジョン(最適化のための事前の個別化)した治療計画をたてることが大切です。ターゲットを明確にした免疫治療は従来の治療にはないLong Tailと言われる長期にわたる持続性があります。つまり、一度効果が出るとがんの抑制と健康な心身の持続性が発揮されます。清々しい社会生活に復帰することが可能な素晴らしい時代となりました。

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