・局所治療と全身治療の使い分け
・免疫解析による治療薬の選定
・全身状態のケア
がんが存在する局所を攻撃する局所治療の利点は、より直接的な治療効果を得られやすいという点です。
さらに、アブスコパル効果といわれる局所において、崩壊したがん細胞から放出される天然のワクチン効果も期待されます。
がんの局所治療としては、陽子線などの放射線治療、血管内治療、樹状細胞の局所注射、深部温熱治療などがあります。欠点としては、局所治療した場所以外のがんのコントロールに課題があります。そのため、局所治療と併せて、全身のがんを制御する全身治療を考える必要があります。
全身治療としては、化学療法剤、分子標的剤、免疫新薬、免疫細胞治療などがあります。このように、局所治療と全身治療を患者さん一人ひとりの治療歴やがんの状態を加味しながら包括的に計画することが肝要です。
特にこの全身治療において最近注目されている免疫新薬では、抗PD-1抗体単剤での投与が基本となります。ところが、がんの患者さんにはそれぞれ異なる複数の免疫抑制がかかっていることが多くみられるため、免疫解析の結果をふまえ、がん細胞の分子構成や転移を見極めたうえで、抗CTLA-4抗体など他の免疫新薬や時には化学療法、分子標的剤を併用することで効果が得られる場合があります。
また、化学療法をする際、栄養不足の状態では全身衰弱を助長し、予定する化学療法が遂行できないことがあります。あるいは、免疫療法では栄養状態が悪いと免疫細胞の効果が十分発揮できません。したがって、がん治療中の栄養状態は特に注意が必要です。時には点滴で栄養補給することも考えなくてはなりません。また、がん性の炎症が広がると免疫異常が起こりやすいので、抗炎症薬の副作用も考慮しながら炎症のコントロールも必要です。
化学療法にせよ、免疫療法にせよ、血流が悪いと薬剤や免疫細胞が目的地に到達しにくいばかりか、老廃物が残存しやすいため弊害が生じます。そこで血流改善剤に頼るばかりではなく、自発的に筋肉を使う運動など無理のない範囲でトレーニングをすると良いと思います。以上のように局所治療と全身治療、免疫解析による最適化、QOLの改善、全身状態のケア、これらを工夫することが、これからのがん医療には非常に重要です。