がんとテロメア(8)がん治療応用への可能性Ⅰ

細胞老化を防ぐテロメラーゼ活性が、がんの悪化に深くかかわっていることを
お話ししてきました。このことに着目した新薬・治療法の開発が進んでいます。

(1)がん分子標的薬としてのテロメラーゼ阻害剤について

テロメラーゼには、ヒトテロメラーゼRNA(HTER)やヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)が
あります。がん細胞内では、おもにhTERTによってテロメアのコピーができると考えられて
います。

一方で、がん細胞内でhTERTの不活化した変異体が過剰発現するとテロメラーゼ活性が
抑えられ、テロメア短縮・アポトーシスが起こります。
以上のことから、テロメラーゼの阻害はがん細胞を叩くための有効な手段の一つだと
いえるでしょう。

そこで、「MST-312」「BIBR1532」「クロラクトマイシン」といった、がん細胞の
テロメアの短縮を促し、細胞老化やアポトーシスを誘導する「テロメラーゼ阻害剤」の
開発が進んでいます。
「GRN163」など動物試験レベルで高い制がん効果を示すテロメラーゼ阻害剤も
出てきています。

また、がん細胞のテロメアは周辺の正常組織や生殖組織のテロメアに比べて
短いことが多いので、テロメラーゼ阻害剤の抗がん効果は副作用よりも早く
あらわれると思われます。

カテゴリー: がんの生命(いのち) パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です