がんの自然死(アポトーシス)について(11)がん抑制遺伝子p53とアポトーシスの関係(後編)

前回、がん抑制遺伝子p53をターゲットとした治療法の研究・開発が行われてると
お話ししました。

一つはp53が欠損したがん細胞に対して、アデノウイルスベクター(風邪や肺炎などを
引き起こすアデノウイルスの病原性遺伝子を取り除き、外来の目的遺伝子を組み込んだもの)
を使って、p53を遺伝子導入する方法です。

しかしながら、変異・異常をきたしたp53遺伝子(変異型p53)が存在する場合、
上の方法のように正常なp53を導入しても、機能回復は期待できません。

そこで、変異したp53を正常化する方法が模索されています。
ある種の化合物には、変異型p53の機能を回復させる効果が期待できます。
実際に、マウス試験では効果があり、治療に役立つ可能性が示されました。

また、p53が変異・欠乏したがん細胞に対しては、「E1b55kというタンパク質が欠損した
アデノウイルスONYX-015」を利用する治療法も考案されています。

このONYX-015というウイルスは正常なp53の細胞には何ら影響を与えません。
ところが、p53が変異・欠乏した細胞の中では増殖し、最終的にはがん細胞を溶解するという
特徴があります。頭頸部がんの臨床試験では、抗がん剤との併用で有効性が示されました。
ただ、このウイルスの抗がん作用はp53と関係ないという報告もあり、作用機序はまだ
はっきりとはわかっていません。

p53のほか、PTENというがん抑制遺伝子も、変異・欠乏するとアポトーシスが抑制されます。
実際、グリオブラストーマ(神経膠芽腫)、子宮内膜がん、前立腺がんなどでPTENの
変異・欠乏が多く確認されています。

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