細胞老化を防ぐテロメラーゼ活性が、がんの悪化に深くかかわっていることをお話ししてきました。
このことに着目した新薬・治療法の開発が進んでいます。
(4)がんペプチドワクチンについて
以前にもお話ししましたが、テロメラーゼには、ヒトテロメラーゼRNA(HTER)やヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)があります。がん細胞内では、おもにhTERTによってテロメアのコピーができると考えられています。
このhTERTは細胞内でペプチドに分解され、クラスⅠMHC分子とともに細胞膜表面上に提示され、キラーT細胞やヘルパーT細胞はそれをターゲットにしてがん細胞を攻撃します。
その点に着目した治療法が、「テロメラーゼがんワクチン療法」です。
「GV1001」というがんペプチドワクチンは細胞に取り込まれた後に細胞膜表面上に提示され、hTERT特異的CTLの活性化を誘導します。
現在、このワクチンは、非小細胞肺がんやすい臓がんを対象にした臨床試験が行われている最中です。
一方、「GRNVAC1」は患者から採取した樹状細胞にhTERT遺伝子を導入したワクチンも開発されています。
いずれも、強い免疫応答(免疫反応)があった患者では、がんの縮小や生存期間の延長などの成果がありました。また、副作用が比較的少ない点でも有望な治療法であるといえるでしょう。