今までお話ししてきたアポトーシス阻害タンパクやがん抑制遺伝子の異常・欠乏以外にも、
アポトーシスを妨げる要素はあります。
その一つがウイルスです。子宮頸がんを起こすヒトパピローマウイルス(HPV)やカポジ肉腫を
起こすヘルペスウイルスなど発がんウイルスにも、アポトーシスを抑える働きがあることが
研究で示唆されています。
また、転移性メラノーマはアポトーシスを起こしにくく、化学療法がなかなか効かないことが
知られています。これはアポトーシスと関わる遺伝子が異常をきたしているからと
考えられています。
実際、試験管レベルでは、がん細胞に正常化した遺伝子を導入すると、アポトーシスが
うまくいくというテスト結果が示されました。
このように、アポトーシスの抑制がいかにがんの発症に関与し、化学療法など治療の妨げに
なっているかをお分かりいただけたでしょう。しかも、アポトーシスの抑制メカニズムは
実に多様です。
効果的ながん治療のためには、個々のがん細胞のアポトーシス抑制メカニズムを理解し、
これらをターゲットにした治療法の開発・実用化が今後治療成功のカギとなってくるでしょう。